倉敷帆布の最も基本となる生地とデザインから生まれた「基帆(きはん)」シリーズ。パーツの一つひとつに至るまで丁寧に見直し、帆布の魅力が真っすぐ伝わるように作った、私たちの代表的なシリーズです。
基本となる生地
手にした時に感じる、心地よいハリとやわらかさ。
不規則に広がる自然なシワが陰影を生み、角度によって見え方が変わる、趣のある表情。
この独特の風合いを生み出しているのが、10号帆布にパラフィン加工を施し、さらに洗い加工をかけた生地です。パラフィン加工とは、生地に蝋(ロウ)を染み込ませる昔ながらの撥水加工のこと。多少の雨を弾くだけでなく、生地にほどよいハリを与えます。
パラフィン加工を施した帆布は、かつてトラックの幌(ほろ)として多く使われていた素材です。荷物を風雨や強い日差しから守るため、軽さと強度を兼ね備えた生地として長く用いられてきました。やがて時代とともに新しい合成繊維が普及し、その役目を終えることになりますが、この生地ならではの魅力は今も変わりません。軽さと強度を兼ね備えながら、使うほどに折れやアタリが生まれ、風合いを深めていくことも、その魅力の一つです。
基帆シリーズでは、このパラフィン帆布にさらに洗い(ワンウォッシュ)加工を施しました。パラフィンならではのハリを残しながらも、手に馴染むやわらかな質感とシワを引き出した豊かな表情を生み出すためです。
素材を生かした基本のデザイン
デザインのベースに選んだのは、私たちの生活の中で普遍的で、実用的な「四角形」。四角い形は、荷物を四隅まで収めることができるため、スペースに無駄がありません。
また、生地そのものの魅力を引き立てるため、装飾は最小限に。シンプルなデザインだからこそ、持ち手の長さや太さ、パーツの大きさ、全体のバランスに至るまで何度も見直しを重ねました。
私たちが大切にしたのは、基本をきちんと整え、帆布そのもののよさが伝わるバッグを作ることでした。
ブランドネームは赤抜きに白字の文字でバッグの左下に配置。これは書道作品に押される落款を意識した位置です。いくつもの工程によって生まれた味わい深い生地の表情を際立たせるとともに、バッグ全体の印象を引き締めるアクセントにしました。

底敷きはバッグ本体と同じ色の帆布で包み、全体に統一感を持たせています。
また、バッグの内側の縁には綿素材のテープを施し、仕上がりを綺麗にするとともに強度も高めました。


持ち手の長さや間隔も細かく調整。素朴でありながら、すっきりと洗練された印象に仕上げています。
私たちは基帆を発売してから約20年間、その生地や形を変えることなく作り続けてきました。
流行に左右されないシンプルな形と、素材の魅力を生かすこと。それは今も変わらない基帆の形です。その魅力を、日々お使いいただくなかで感じていただけたら幸いです。
デザイン/大治将典 Oji & Design